TOEIC940朝田の英語勉強ブログ

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戯曲『ロンサム・ウェスト』(マーティン・マクドナー)を読んだ

 

 マーティン・マクドナーの初期の戯曲、『ロンサム・ウェスト』(2006年11月号に所収。芦沢みどり訳)を読んだ。大学図書館早川書房からでてる「悲劇喜劇」という雑誌のバックナンバーがあり、たまたま手に取った号に載っていた。いい機会だと思い、読むことにした。

 

ndlonline.ndl.go.jp

 

ストーリー

 話はアイルランドのゴールウェイ郡リーナンを舞台に進む。コールマンヴァレンという非常に仲の悪い兄弟が、二人の父親の葬儀を終え、最近リーナンに派遣されたウェルシュ神父とともに帰宅する。コールマンが誤って父に銃を発砲してしまい死なせてしまったのだ。兄弟は父親の死に際して感傷に浸る…ようなことは特になく、参列客に文句を言い、あらゆることで口喧嘩をはじめ、しまいには手を出すまでに発展するが、神父は威厳がなく止めることができない。ウェルシュ神父は登場人物のほとんどから名前を「ウォルシュ」と間違えて呼ばれるなど慕われていない。町の若い娘ガーリーンからも名前を間違えられ、頻繁にからかわれる始末だ。

 

 リーナンはとにかく治安が悪く、兄弟の口から語られるエピソードは、どうやら子供が親を斧で頭をぶった切って殺害したなど凄惨なものが多い。ほぼ確実に殺しているらしいが、警察がまともに動かないため殺人犯はとくにお咎めなく暮らしている。ウェルシュ神父はリーナン地区に来てから自分の仕事に自信を失い、酒浸りになる。

 

 だが、ある日、町で一人の男が自殺をしたことから物語は急展開を迎える。神父は犯罪や人の死の絶える気配のない街に嫌気がさし、コールマンら兄弟に手紙を書き、ガーリーンにこれを二人に渡してくれと頼んで「今夜、町を出る」といいながら立ち去るが…

 

 暴力・侮蔑的発言・人の死などマーティン・マクドナーらしさの多い作品だった。この作品はマクドナーの初期のアイルランドを舞台にしたリーナン三部作の一つに数えられている。

 

 私はマクドナーの作品はいままで『スリー・ビルボード』『ヒットマンズ・レクイエム(原題:In Bruges)』『ウィー・トーマス(原題:The lieutenant of Inishmore)』の3作(映画を2作、戯曲を1作)を見たことがある。

 

 この作品も上記の例にもれずそうだった。ただ、『ヒットマンズ・レクイエム』『ウィー・トーマス』に比べるとコメディ的な要素はかなり少なかった気がする。マクドナー作品はグロテスクな場面や不謹慎な発言が多いがそれでも笑えるというブラックコメディ的な要素が多いのだが『ロンサム・ウェスト』に関しては、それをそこまでは感じなかった。

 コールマンとヴァレンが終盤に行う、お互いが相手にやった悪事を告白するという場面は少し面白かった。明らかに許せていないはずなのに、言葉の上では「許そう、まったく怒ってない」と宣言しないといけないのでおかしみがあった。切った耳を持ってくるシーンはさすがに気分が悪くなった。

 

 絶賛するような作品ではないかもしれないが個人的にマクドナーの作品は好きなので気が向いたらまた『ロンサム・ウェスト』を読んでみようと思う。